会議内容

今年度3回目(第7回目)の会議を以下のとおり実施しました。

□日 時:2013年12月20日(金)15:00-17:00
□場 所:京都府庁旧本館1階NPOパートナーシップセンター会議室
□内 容:ソーシャルインクルージョンの観点からみた障害者福祉について
      講師:炭谷 茂 様(社会福祉法人恩賜財団 理事長)

       

<ご講演内容> <動画
1 日本において解決されない多くの福祉問題
   決して良い方向に向かっていない
   古くからある問題は、むしろ深刻化。新しい問題は発生
(1)ホームレス
   人数は減少したけれど、実質的なホームレスの増大, 若者のホームレス  
(2)障害者の社会参加
   障害者の就業率、特に精神障害者の低さ
   多様化する障害者
   不況時に真っ先に解雇される
(3)刑余者の社会復帰
   再犯を繰り返す
   知的障害、高齢者の増大
(4)孤立死、孤独死、無縁死

2 これらに背景にある要素に着目
(1)社会との関係
   家族・親族、地域社会、企業の絆の脆弱化 → 社会的孤立・排除
(2)貧困(貧困層が沈殿・増加)
(3)他人との濃密な関係を避ける傾向 (情報化社会の進展)

3 ヨーロッパでも同様な状況
(1) 社会的排除問題が最大の政治課題
   若年失業者、貧困者 障害者 外国人 薬物依存 ホームレスなど
(2) ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)の理念の登場
    1990年代にフランスで生まれ、ドイツ、イタリア、EU全体へ
(3)日本でソーシャルインクルージョン施策の必要性を訴える
(4)最近、日本でもソーシャルインクルージョン政策が推進
   障害者権利条約の批准の動き

4 ソーシャルインクルージョンを具体化させるには
(1)具体的な事業が必要
   仕事、教育、余暇活動の機会等の喪失 ⇔ 社会的排除・孤立
(2)なかでも仕事が重要
  ① 仕事の意義
    人間としての尊厳、経済的自立、心身の健康、人間としての成長
     なによりも人とのつながり
  ② 今日の働く場の状況
    公的職場、一般企業、 障害者雇用率の低迷
  ③ 補完するものとして第3の職場の必要性
    社会的企業、社会的な使命、ビジネス的な手法、生きがいのある仕事、住民参加

5 その一つとしてソーシャルファームの有効性
(1) ヨーロッパの状況
   1970年代北イタリア、トリエステの精神病院で生まれる
   当事者の主体的参加がポイント
   イタリア全土へ
   ドイツ、ギリシャ、イギリス、オランダ、スウエーデン、フィンランド等へ
   1万社以上の存在
(2)日本に2千社の設置を訴える
   対象者は2千万人以上
   障害者、高齢者、難病患者、ニート、引きこもり等の若者
   刑余者など通常の労働市場では仕事が見つからない者
   ソーシャルファームの位置づけ
   生涯の働く場として
   次の職場への中間施設として
   ベンチャービジネスへの発展

6 成功するための事例研究
(1)農業
  ① NPO「たんぽぽ」の例
    固定種による自然農業 → F1ではなく固定種、精神障害者、引きこもりの若者
    イタリアレストランの経営
  ② 愛南町の精神病院御荘病院の「なんぐん市場」の例
     アボカド、しいたけ、お茶などの栽培、ドッグラン、レストラン経営
     → アボカドは日本で最初の栽培(独自性)ドールが一手に購入(企業の援助)
    アボカドは価格が高く、需要が増大(市場性)
    町の雇用に貢献(社会的意義)
  ③ 新得町「共働学舎」の例
    70名のハンデキャップを有した職員によるチーズ作り、2億円の売り上げに
    → 生乳の10倍の価格に(高付加価値)
    世界の専門家からの指導(高品質)
    さくらブランドにより日本一に(ブランド性)
  ④ イギリス「リーバーサイド マーケット ガーデン」の例
    カーディフで2010年に発足、有機農法
     周辺住民に200家庭に販売、資金は地元従民120人が出資  
    マーケットで販売することによるまちの活性化
(2) 環境
  ①「アルハイテック」の例 → 世界でただ一つ(独自性)
    廃アルミのリサイクル、水素(電力)、パルプ、A重油、水酸化アルミニウムを製造
     新エネルギー、循環型社会(社会的意義)、収益性が高い
    大企業の出資(資金の確保)、地域社会、大学の協力
  ② 「緑の風 西川」の例
    エゾシカの皮でハンドバック製造、有害鳥獣として年10万頭以上補殺
     → 高級なハンドバック(高付加価値)
    十分な訓練(高い品質) 高度な製造技術、販売網、生物多様性への貢献
  ③ イギリス「バイク」の例
    中古自転車のリサイクル、修理技術の教授、ホームレス、元受刑者等
    → 自転車ブーム(需要の増大) 銀行、警察などの支援
    ロンドンオッリンピック、ツールドフランス、健康ブーム
    経営計画(経営力)
  ④ イギリス「ブリストル・トギャザー」の例
    古家の修理、販売、、ホームレス、元受刑者等
    → イギリスの国民性(ニーズの一致)、アンテーク好き
    需要の存在、人口の移動の大きさ、独自のビジネスモデル(独自性)
(3)その他
   サービス業、製造業なども

7 発展していくためのポイント
  平成20年 ソーシャルファームジャパンを設立
(1)商品・サービスの開発
   皆で考える(サロンの効用)、 需要がある、ニッチなもの、独自性
   労働集約的、デザイン力
(2)販売力の強化
   ソーシャルファームのネットワークの形成
   アンテナショップ、商品カタログの作成
    ソーシャルファームブランドの確立、ゴマーク 
(3)経営資金の確保
   国、地方自治体の助成、民間助成団体
   探せば必ず見つかる
   ソーシャルファームのスピリットは、税に依存せず、自主独立が基本
(4) 支援者の確保
   資金、ボランテイア、消費者として
(5) 健常者とのコラボレーション
   それぞれの特徴を発揮
(6) 国際協力
   今年7月 ロンドンで会議

8 結びとして
(1)新しい福祉のあり方を求める
(2)まちづくりとして
  活気のあるまちに
  住民も参加 → ソーシャルインクルージョンの推進

このページのトップへ