毎日中学生新聞 2005年(平成17年)3月21日

OECD学習到達度調査世界トップにフィンランド
ゆとり教育で成果




 フィンランドでも小学校は6年制、中学校は3年制で、いずれも義務教育だ。早稲田大学名誉教授の中嶋博さんによると、日本をまねて1970年代に始まった教育制度だという。現在は小中とも完全週5日制で、中学校3年間での総授業時間数は2660時間と、日本の中学校(2940時間)より少ない。「それでも学力が高いのは教員や授業の質によるところが大きい」と中嶋さんはいう。

 教師の研修ツアーなどを組んでいる京都市の非営利組織(NPO)「アントレプレナーシップ開発センター」事務局長の原田紀久子さんは昨年9月に、フィンランドの中学校を視察した。「どの授業でも、教師は生徒に意見を求めて、生徒の発想、学習意欲を引き出していた。それができるのは、教師の質が高いからだ」と感じたという。

 フィンランドで教師になるには、大学院を修了しなければならない。半年間におよぶ現場実習など専門教育をみっちり受け、適性試験でふるいにかけられ、修士号を取得すると資格が与えられる。そうして教師になると、教科書から授業の取り組み方まで、自由に選ぶことができる。


落ちこぼれを防ぐ

 中学校ではすべての授業が4〜5人のグループに分かれて、進められていく。各グループにはその科目を得意な生徒が1人置かれ、理解の遅れている生徒を教えていく。中嶋さんは「日本のように、勉強ができる生徒とできない生徒に分けて教える習熟度別学習ではなく、落ちこぼれを防ぐ手だてを実行している。中学生は毎日、学校で新たに発見することがあるから、登校を楽しみにしている」と説明する。

 フィンランド文部省は今回の学習到達度調査の結果を「総合性教育(ゆとり教育)の勝利」と宣言した。「今は日本がフィンランドから教育を学ぶべきだ。そうすれば、日本はゆとり教育をやめるべきではないと分かるはずだ」と中嶋さんは指摘する。

 例えば、読解力の到達度調査結果を見ると、前回(2000年)と今回(03年)では日本は8位から14位に下がったが、フィンランドはいずれも1位。フィンランドでは1995年に実施した全国学力テストで中学2年生の読解力が落ちたことに危機感を持ち、新聞雑誌協会、図書館協会、教員組合が一丸となって、中学校の図書館の蔵書を充実させたり、学校に作家を招いて読書への関心を高めるなど、読解力向上に努めてきた。「その結果、子どもたちは自宅でも本を読んで自分の好きなことを調べるなど、問題を解決する力を身につけてきた」と中嶋さん。

 こうした力は、ただ単に授業時間を増やしたり、つめこみ教育を復活させたからといって、身につくものではない。「生涯にわたって学習する力がついたかどうかを測るのが学習到達度調査。生きる力を持っていないことがわかったのだから、正確に調査結果を分析する必要がある」と中嶋さんは訴える。

 「順位が下がったから、教育制度を見直さなければ」と今さら言われても、みんなの中学校生活はもう戻ってこない。「どうしてくれる」と文句を言いたい気分の人もいるかもしれないが、「生きる力」をどう身につけていくかなら、一人ひとり考えられるはず。そんな気持ちでもう一度、「何を、どう学ぶか」を見直してみよう。