教育新聞 2000年(平成12年)11月9日

求められる起業家指導者
起業家センターの取り組み


 起業家教育センターは、京都リサーチパーク(株)京都市や産業界、大学などの支援のもと、(財)京都高等技術研究所、(株)京都ソフトアプリケーションとの共同で、昨年四月に設立。このセンターは、京都を代表するベンチャー企業創設者である堀場雅夫をセンター長とし、日本経済の活性化に寄与し、国際化・情報化時代に対応する人材育成、または、そのような人材を育成できる指導者の育成を目的としている。

 当センターでは、新しい教育プログラムや教材の開発、教育者研修や学校への社会人講師の派遣、通信ネットワークを利用した共同学習の導入支援、教員・生徒両方のインターンシップや専門家を招いたセミナーやワークショップなどを実施している。その中でも、いちばんの課題と考えている事業が指導者研修である。

 生徒の可能性は、教える側の指導方法によって、大きく違ってくるからであり、この起業家教育も生徒主体の授業であるだけに、それを指導する教師が起業家教育の意義やねらい、支援者としての指導力を習得していることが、その成果には不可欠であるからだ。

 ■「生きる力」の育成と共通
 「起業家教育」は、欧米ではEntreprize EducationまたはEntrepreneurship Education と呼ばれているが、日本では言葉だけみると、起業家を育てるための教育かと受け止められがちである。
 本来、この「起業家教育」がねらいとしているものは、文部省が推進する教育改革のテーマである「生きる力」の育成教育と多くの点で共通しており、一つだけ違う点があるとするならば、起業家教育では、生活していくための生業を自ら起こしていける力を育成することを求めていることである。
 どんなにすばらしい芸術家でも、自分の作品を売って、収入を得る力がなければ食べていけないのである。子供たちは、小さい頃から社会活動への参加などを通じて、経済活動や社会の仕組みなどを理解するとともに、職業の多様性や社会で必要とされる実践スキルを認識する必要がある。
 当社で開発した教材は、@生徒主体の授業A子供自ら課題を見つけ、解決するまでのプロセスの体験Bグループ学習C教科間の枠を越えた活動D企業など地域社会の資源の活用E大人は支援者と同時に学習者となるF評価の明確化とその多様性――などの視点のもとに開発されており、指導者には、これらを実践できる指導能力が必要とされる。

 ■教える大人も変化する
 社会人であれば誰でも認識していることであると思うが、実社会に出て、いちばん必要とされるのは、正解の用意されていない問題に対して、自ら答えを出し、その決断に責任を持てる力である。そして、この力を育成する上で、起業家教育の視点は、大きな意義のあるものだと考える。
 起業家教育を導入した学校の生徒の共通の意見が「他の授業と違う」「自分で考え自分で進めていく授業は大変だけど楽しい」ということであり、教師は、「まだまだ自分が生徒の可能性を見きれていなかった」「自分も外部の人と接することで、実社会について学ぶことが多い」ということである。
 起業家教育で変化するのは、生徒より教える大人の方ではないだろうか。